さまざまなベンダーのSQL解析のためのコア技術、QSI(Query Structural Interface)
November 22, 2024
序文
CCPA、GDPR、ISO 27001といったグローバルコンプライアンスを遵守する必要がある企業が、世界的に急増しています。このようなビジネス環境の変化により、一貫したデータ管理とセキュリティが企業活動の必須要素として浮上している傾向があります。実際に、データベースシステムは多様なプラットフォームとクエリ言語を介してアクセスされることが一般的ですが、データベースごとに文法や動作が異なるため、一貫したアクセス制御とモニタリングを行うのは非常に困難な問題です。そこで今回は、複数のデータベースのクエリを単一の抽象構文に統合し、リアルタイム分析を通じてデータベースクエリセキュリティの基盤を提供するソリューションをご紹介します。
Step.1 問題の発見: 多様なデータベースの文法の違いが管理の複雑さを引き起こす!
大規模企業やデータ中心の組織では、MySQL、SQL Server、PostgreSQL、Oracleといった従来のSQLデータベースだけでなく、MongoDBのような NoSQLデータベースも同時に使用しています。しかし、データベースごとにクエリの文法や動作が異なるため、同一のセキュリティポリシーを一貫して適用するのは容易ではありません。特に、データベースが拡張され、複雑化するにつれて、クエリの制御とセキュリティ管理の難易度が高まり、最終的には潜在的なセキュリティ脅威につながる可能性があります。このような複雑性は、GDPRやCCPAのような個人情報保護規制の要件を満たす際の障害にもなります。
以下は、データベースごとに行数を制限するクエリの例です:
MySQL
SELECT * FROM {table} LIMIT 10
SQL Server
SELECT TOP 10 * FROM {table}
Oracle
SELECT * FROM {table} FETCH FIRST 10 ROWS ONLY
MongoDB
db.getCollection('{table}').limit(10);
だからこそ、データベースクエリの制御が重要です。
今日のデータ漏洩事故の半数以上は、内部の脅威や不適切なアクセス制御に起因しています。例えば、一部の権限のないユーザーが高度な権限を必要とするデータを閲覧しようとした場合、従来のアクセス制御システムではこれを効果的に遮断することが困難です。クエリアクセスを適切に管理しないと、データ漏洩や悪意ある使用が発生する可能性が高まります。特に、データを直接扱う従業員やアナリストが機密データを含む大規模なクエリを実行する場合、その結果を予測するのは困難です。このような事態は、企業の重要な資産であるデータを、高い損失リスクにさらすことにほかなりません。
Step 2. 目標の設定: グローバルコンプライアンス要件を満たすソリューションを探せ!
これらの問題を解決するには、多様なデータベースに対して一貫したセキュリティポリシーを適用できる技術が必要です。この技術は、ISO 27001の情報セキュリティ管理システムの実装や、GDPRやCCPAで求められるデータ保護および個人情報管理の基盤となります。QueryPieは、これらのグローバルコンプライアンス要件を満たすための基盤技術について深く考えました。
一貫したセキュリティポリシー適用のためのQueryPieの3つの主要なアプローチ
多様なデータベースに一貫したセキュリティポリシーを適用するために、以下の3つの主要なアプローチを提案します。
- 多様なデータベースクエリのAST統合: MySQL、SQL Server、Oracle、MongoDBなど、多様なデータベースのクエリ文法を単一の抽象構文木(Abstract Syntax Tree, AST)に統合します。これにより、異なるデータベースのクエリを一貫して処理および分析することが可能になります。
- リアルタイムクエリ分析と結果予測: ASTをリアルタイムで分析しながら、データベースのスキーマ情報を参照してクエリの実行結果を予測します。これにより、ユーザーやアプリケーションが実行するクエリの影響範囲を事前に把握することができます。
- オブジェクト間の関係の精密な分析: クエリに含まれるテーブルやカラムなど、データベースオブジェクト間の関係を詳細に分析します。これにより、データフローを追跡し、機密データへのアクセスを効果的に検出して内部脅威を防止します。
技術的説明
実行段階
実行プロセスは以下の 4つの段階に分類されます:INPUT
、 RAW AST
、 QSI AST
、 Analysis Result
- まず、INPUT段階では、クエリを受け取り、RAW AST(抽象構文木)にパースして構文構造を把握します。
- 次に、QSI AST段階で構文木を意味的構文木に変換し、各クエリ要素間の論理的関係を定義します。
- 最後に、Analysis Result 段階では、分析された情報を基に最終結果を生成し、クエリ結果がどのように構成されるかを予測するモデルを提供します。
INPUT
データベースクエリが原文のまま入力されます。
SELECT * FROM sakila.actor
RAW AST
RAW ASTは、入力されたデータベースクエリをパースした際に、基礎的なパーサーが出力する結果を指します。
基礎的なパーサーは、ANTLR、YACC、JavaCCなどのよく知られたパーサージェネレーターを使用して実装されており、これによりデータベースごとに構文構造を分析したAST(抽象構文木)の結果が異なる可能性があります。同じパーサージェネレーターを使用していても、文法が異なる場合、MySQLのSELECT 1
クエリとOracleのSELECT 1 FROM DUAL
クエリが意味的に等しいことを認識することはできません。
データベースごとのSELECT * FROM actor
の例:
MySQL (ANTLR4)
Oracle (ANTLR4)
PostgreSQL (YACC)
QSI AST
QSI ASTは、データベースクエリの意味的構造を表現します。主に派生(Derivation)、結合(JOIN)、元データ(Source)を通じてデータ加工の過程を表し、さまざまなデータ処理演算を構造化します。以下に各要素の説明を示します。
データ参照
実際のデータが保存されているテーブルや元データへの参照を表します。
例: actor
という識別子は、データベースに保存された特定のテーブルを参照し、そのデータを取得する操作を行います。
派生テーブル
特定のテーブルから派生した新しいデータを表します。
例: SELECT name AS n FROM actor
クエリでは、actor
テーブルのname
カラムにn
という別名を付けて新しい形式として提供します。
結合テーブル
複数のテーブルを結合し、関連付けられたデータを1つの結果として提供する構造です。
例: SELECT * FROM address JOIN city USING (city_id)
クエリでは、address
とcity
テーブルをcity_id
を基準に結合し、両テーブルの関連データを取得します。
複合テーブル結合
複数の結果セットを結合する操作をサポートするノードです。
例: SELECT 1 UNION ALL SELECT 2
クエリでは、2つのSELECT
結果を1つのテーブルに結合して返します。
インライン派生テーブル
特定の値をテーブル形式で直接提供する方法を指します。
例: VALUES (1,2), (3,4)
クエリは、2つの行と2つの列を持つ小さなテーブルを生成し、その場で使用可能な形にします。
テーブル関数呼び出し
特定の関数を呼び出し、テーブル形式のデータを返す構造を表します。
例: SELECT * FROM table_function()
クエリでは、table_function()
という関数が返すテーブル形式のデータを取得します。
分析結果
最終的な分析結果として、入力クエリに基づいて返される構造化されたデータモデルを提供します。
特に、SELECT
クエリのようにテーブル形式で出力されるクエリの分析結果は以下の項目で構成されます。
- 最終カラム一覧
SELECT
句で指定されたカラムのリストを指し、テーブルの最終的なカラム結果を意味します。
- 参照カラム一覧
- サブクエリのカラム、関数で使用されたカラムなど、データの出所となるすべてのカラムを指します。
- 参照テーブル一覧
- データが保存されている元のテーブルや、別名として指定されたテーブル、共通テーブル式(CTE)など、結果がテーブル形式となるものを指します。
- 間接カラム一覧
- 結果のカラムに直接影響を与えないが、
WHERE
やHAVING
句などで使用されるカラムを指します。
- 結果のカラムに直接影響を与えないが、
例
入力クエリ
SELECT a.address || ', ' || c.city AS addr,
a.phone AS phone
FROM address AS a, city AS c
WHERE a.city_id = c.city_id
分析結果
View
クエリに記述されたテーブルがViewのようにデータを参照している場合、View 定義を確認・分析し、データが保存されている元のテーブルまで追跡します。このプロセスでは、以下の手順を経て View の内容を解釈します。
View定義
CREATE VIEW sakila.actor_view (
id,
full_name,
update_at
) AS
SELECT actor_id,
first_name || last_name,
last_update
FROM actor
入力クエリ
SELECT * FROM actor_view
分析結果
ユースケースを徹底的に検証:模範的な実践例
QueryPieは、データセキュリティを強化し、GDPRやCCPA、ISO 27001などのグローバルコンプライアンスを遵守するため、以下のような詳細なアプローチと技術を導入しています。
データアクセス制御
- 細分化された権限設定: テーブルおよびカラムレベルでアクセス権限を細かく設定し、最小権限の原則を遵守します。
データマスキング
- 動的データマスキング: リアルタイムでデータを照会する際、ユーザー権限に応じて機密情報がマスキングされるように設定します。
- マスキングポリシー管理: マスキングルールを中央で一元管理し、一貫性を保ちます。
機密データモニタリング
- アクセス通知および警告システム: 機密データへのアクセスが発生した際、リアルタイムで管理者に通知を送信します。
- ログおよび監査追跡: すべてのデータアクセス活動を詳細に記録し、後日の監査や分析に活用します。
- 異常行動検出: 機械学習などを活用し、異常なデータアクセスパターンを特定して対応します。
台帳テーブル保護
- アクセス制限およびモニタリング: 財務や会計に関連する台帳テーブルへのアクセスを厳しく制限し、アクセス時にモニタリングを強化します。
- データの整合性維持: 台帳データの変更が必要な場合、承認プロセスを経るようワークフローを構築します。
QSI: データセキュリティの革新、信頼と競争力を高める秘訣!
現代の企業は、多様なデータベース環境と複雑なグローバルコンプライアンス要件の中で、データセキュリティを維持するという課題に直面しています。本記事で紹介した QSI は、こうした課題を克服するための基盤技術を提供します。
さまざまなベンダーのクエリパースを統合し、リアルタイムでクエリを分析することで、企業は一貫したセキュリティポリシーを適用し、データ漏洩のリスクを最小化できます。また、優れた実践例を適用することで、データアクセス制御、データマスキング、機密データのモニタリング、台帳テーブルの保護などを強化し、**ISO 27001、GDPR、CCPAといったグローバルコンプライアンス要件を効果的に遵守できます。
データセキュリティは単なるリスク回避にとどまらず、企業の信頼性と競争力を向上させる重要な要素です。企業はQSIを活用することで、複雑なデータベース環境においても安定的にデータを管理し、規制遵守による法的リスクを最小化しつつ、ビジネス目標の達成により一層注力することができます。
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